因数分解は数学Ⅰの最初の難所です。
特に「文字が1つのときは解けるのに、文字が2つ($x$ と $y$)になった途端に何をすればいいかわからない!」という声が圧倒的に多い単元です。
今回は、$x$ と $y$ の2変数が入った式の因数分解を「次数の低い文字に注目して整理する」という最強の方針をもとに丁寧に解説します。最後には $x, y, z$ の3変数(輪環型)にも挑戦します!
1.そもそも、なぜ「整理」するのか
まずは、次の式を眺めてみてください。
$$x^2 + xy + 2x + 2y$$
$x$ と $y$ がごちゃ混ぜになっていて、パッと見ではどう因数分解していいか迷いますよね。そこで、試しに「$x$ について整理」($x$ の次数が高い順に並べる)してみましょう。
【ここがポイント!】他の文字は「数字」扱い
$x$ について整理するとき、$y$ はただの数字(係数)として扱います。
$$x^2 + (y + 2)x + 2y$$
こうすると、見慣れた「$x$ についての2次式」の形が浮かび上がってきます。

【先生の頭の中:式の見え方】
- $x^2$ の項 $\to$ 係数は $1$
- $x$ の項 $\to$ 係数は $(y+2)$
- $x$ がない項(定数項) $\to$ $2y$
ここまでくれば、中学生のときにやった「足して $(y+2)$、掛けて $2y$」になる2つの数字を探すたすき掛けと同じです。掛けて $2y$ になる組み合わせは $y \times 2$。足すとしっかり $y+2$ になりますね。
$$x^2 + (y+2)x + 2y = (x + y)(x + 2)$$
「他の文字をただの数字として扱う」だけで、複雑に見えた式が見慣れた形にワープします。
これが複数文字の因数分解の基本です。
2.「次数の低い文字」に注目して整理する鉄則
2変数以上の因数分解では、「次数の低い方の文字について整理する」のが大原則です。
【なぜ「次数の低い文字」なの?】
次数が低い文字で整理した方が、
式をまとめたときの「項の数」が少なくなり、圧倒的にシンプルになるから
です。
- 例えば、$x$ が3次で $y$ が1次の場合:
- $x$ で整理すると:$(\quad)x^3 + $(\quad)x^2 + $(\quad)x + $(\quad)$(4つの項できて地獄)
- $y$ で整理すると:$(\quad)y + (\quad)$(2つの項だけで超スッキリ!)
具体的な手順を「行動フロー」として頭に叩き込みましょう。
- 【確認】 $x$ と $y$ のそれぞれの最高次数をチェックし、一番次数が低い文字を選ぶ。
- 【整理】 選んだ文字について降べきの順(次数の高い順)に並べる。
- 【部分】 お尻にある「定数項(係数部分)」を先に因数分解する。
- 【全体】 因数分解できた係数を使って、全体を大きなたすき掛けや共通因数でまとめる。
3.例題で練習しよう!
【例題1】同じ次数のパターン
$$x^2 + 3xy + 2y^2 + 3x + 4y + 2$$
Step 1:次数を確認する
- $x$ の最高次数:2次($x^2$)
- $y$ の最高次数:2次($2y^2$)
同じ次数なので、どちらで整理してもOKです。今回は慣れている $x$ について整理してみましょう。
Step 2:$x$ について降べきの順に整理する
$$x^2 + (3y + 3)x + (2y^2 + 4y + 2)$$
$$= x^2 + 3(y + 1)x + 2(y^2 + 2y + 1)$$
Step 3:定数項(係数)を因数分解してみる
【ここが核心!】全体がダメなら小分けにする
全体を見てフリーズしてはいけません。お尻の $2(y^2 + 2y + 1)$ だけでたすき掛けをしてみると……
$$2(y + 1)^2$$
綺麗に因数分解できました!
これを元の式に戻します。
$$x^2 + 3(y+1)x + 2(y+1)^2$$
Step 4:たすき掛けで全体を因数分解する
ここで、塊として見づらい人は $y+1 = A$ と置いてみましょう。
$$x^2 + 3Ax + 2A^2$$
これなら「掛けて $2A^2$、足して $3A$」なので、$(x+A)(x+2A)$ と一瞬で分かりますね。
$A = y+1$ を戻して整理します。
【例題1の答え】
$$(x + y + 1)(x + 2y + 2)$$
【例題2】係数にマイナスが入るパターン
$$2x^2 – xy – y^2 + 5x + y + 2$$
Step 1:次数を確認する
$x$ も $y$ も最高次数は2次です。
【ワンポイントアドバイス】
今度はあえて $y$ について整理してみましょう。なぜなら、元々の式で $y$ に関わる項の方が数が少なく、整理した後の係数がシンプルになって計算ミスが激減するからです!
Step 2:$y$ について降べきの順に整理する
$$-y^2 + (-x + 1)y + (2x^2 + 5x + 2)$$
Step 3:定数項(係数)を因数分解してみる
お尻の $2x^2 + 5x + 2$ をたすき掛けします。
$$(x + 2)(2x + 1)$$
これを元の式に戻すと、次のようになります。
$$-y^2 + (-x + 1)y + (x + 2)(2x + 1)$$
Step 4:たすき掛けで全体を因数分解する
頭の $-y^2$ を $(-y) \times y$ に分解し、お尻のパーツと斜めに掛けて、真ん中の $(-x+1)$ を作ります。
【たすき掛けのシミュレーション】

よって、そのまま横に並べてカッコに入れます。
$$\{y + (2x + 1)\}\{-y + (x + 2)\}$$
【例題2の答え】
$$(2x + y + 1)(x – y + 2)$$
4.全体を見て因数分解する——最後は必ず元に戻る
例題1・2で共通するパターンに気づいたでしょうか。
- 1つの文字(次数の低い文字)について整理する
- 係数(小分けした部分のところだけ)を因数分解する
- 因数分解した係数を使って、全体を1つの積の形に戻す
2.の「小分けにして因数分解」はあくまで準備です。
最終的には全体を $( \quad )( \quad )$ の形にまとめることがゴールだと常に意識しましょう。
5.3変数の因数分解——対称式・輪環型に挑戦
最後に $x, y, z$ の3変数が登場する因数分解を紹介します。3変数になっても「一番次数の低い文字をボスに決めて、他は数字とみなす」という基本は全く同じです。
【例題3】基本型(対称式)
$$x^2 + xy + xz + yz$$
どの文字も最高次数は同じなので、$x$ について整理してみましょう。
$$x^2 + (y + z)x + yz$$
「掛けて $yz$、足して $(y+z)$」になる2つの式を探します。これはもう見たまんま、 $y$ と $z$ ですね!
【例題3の答え】
$$(x + y)(x + z)$$
【例題4】最難関:輪環型(サイクリック型)
$$x^2(y – z) + y^2(z – x) + z^2(x – y)$$
このように、$x \to y \to z \to x$ と文字が丸く循環している形を「輪環型(サイクリック型)」と呼びます。定期試験の失点サヨナラ問題ですが、手順通りにいけば必ず解けます。
Step 1:すべての文字が2次なので、1つの文字(今回は $x$)で整理する
まずは一旦バラバラに展開して、$x$ の2次、1次、定数項に仕分けします。
$$= x^2y – x^2z + y^2z – y^2x + z^2x – z^2y$$
$$= (y – z)x^2 – (y^2 – z^2)x + yz(y – z)$$
Step 2:各パーツ(係数)を因数分解する
真ん中の $(y^2 – z^2)$ を $(y-z)(y+z)$ に直します。
$$= (y – z)x^2 – (y – z)(y + z)x + yz(y – z)$$
【共通因数を発見!】
すべての項に $(y – z)$ という共通の塊が出現しました。これを大カッコの前にごっそり括り出します。
Step 3:共通因数を括り出して、中身を仕上げる
$$= (y – z) [ x^2 – (y + z)x + yz ]$$
大カッコの中身は、「掛けて $yz$、足して $-(y+z)$」なので、$(x-y)(x-z)$ に因数分解できます。
$$= (y – z)(x – y)(x – z)$$
【輪環の順(サイクリックの順)の仕上げ】
数学の世界では、アルファベットを $x \to y \to z \to x$ と綺麗に循環させて並べるのが美しい(=採点官に最も好まれる)とされています。
最後の $(x-z)$ の符号をひっくり返してマイナスを前に出すことで、輪の形に整えましょう。
【例題4の答え】
$$-(x – y)(y – z)(z – x)$$
6.全体のまとめ
| 変数の数 | 方針 | ポイント |
| 2変数 ($x, y$) | 次数の低い文字で整理 | 係数(お尻)を因数分解し、全体に活かす |
| 3変数 ($x, y, z$) 基本型 | 次数の低い文字で整理 | たすき掛けで残りの2変数式を処理する |
| 3変数 ($x, y, z$) 輪環型 | 1つの文字で展開&整理 | 必ず共通因数($y-z$ など)が出るので括り出す |
複数文字の因数分解は「全体を一気に見ようとするからパニックになる」だけです。
「まず次数の低い文字で整理 $\to$ 部分的に因数分解 $\to$ 全体を大きくまとめる」
このスリーステップを意識すれば、どんなに文字が増えても確実に一本道で解けるようになりますよ!


コメント