1.速度よりヤバい!?桃白白の「柱」の真実
『ドラゴンボール』の初期を代表する殺し屋、桃白白(タオパイパイ)。
彼の代名詞といえば、自分で折った建物の柱を空へ投げつけ、その柱に自分で飛び乗って 2,300 km 先へ移動する伝説の「柱投げ」です。
ネット上ではよく「投げる速度はマッハ8(秒速約 2.7 km)」「柱に追いついて飛び乗る桃白白の脚力がヤバい」といった速度や運動学の計算が話題になります。
しかし、物理や工学(材料力学・流体力学)の視点から見ると、本当にツッコむべきはそこではありません。
「そもそも、そんな衝撃と空力荷重を受けたら、柱がその場で木っ端微塵に砕け散るのでは……!?」
今回は、速度の計算はあえて横に置き、「あの石柱が受ける衝撃力と強度」にスポットを当ててガチ考察していきます!
2.計算の前提条件(柱のスペック)
まずは、作中の描写から柱のスペックを定義しましょう。
- 柱の形状: 石造りの円柱(パルテノン神殿の柱のような石柱)
- 寸法: 長さ $L = 2.0 \text{ m}$、直径 $D = 0.8 \text{ m}$(半径 $R = 0.4 \text{ m}$)
- 推定重量: 石材(花崗岩・大理石等)の密度を約 $2.7 \text{ t/m}^3$($= 2,700 \text{ kg/m}^3$)とすると……
円柱の体積 $V$ は、
$$\displaystyle V = \pi \times R^2 \times L = \pi \times (0.4)^2 \times 2.0 \approx 1.005 \text{ m}^3$$
つまり、あの柱の質量 $m$ は約 2.7 トン(2,700 kg)です!乗用車2台分ほどの巨大な石の塊ですね。
3.衝撃①:手から離れる瞬間の「圧縮応力」
桃白白は、この 2.7 トンの柱を「手で投げて」一瞬でマッハ8(約 2,700 m/s)まで加速させます。
仮に、手を振る押し出し距離を $1 \text{ m}$、加速時間を $t$ とすると、等加速度運動の公式 $v^2 = 2ax$ より、
$$\displaystyle a = \frac{v^2}{2x} = \frac{2700^2}{2 \times 1} = 3,645,000 \text{ m/s}^2$$
なんと約 37万 G という異次元の加速度がかかります。
ちなみに、戦闘機やアクロバット飛行のパイロットが実戦や実機で耐えるGの限界は、一般的に「9G〜12G」です。人間の体は対策なしでは5G程度で脳への血流が止まり失神してしまいますが、プロのパイロットは特殊な訓練や装備によってそれを遥かに超える超高Gの世界を生き抜いています。
なので約 37万 Gというのはどれだけ馬鹿げた数値か、分かるかと思います。
このとき、桃白白の手が柱を押す力(手から与えられる衝撃力 $F$)は、運動方程式 $F = ma$ より、
$$\displaystyle F = 2,700 \text{ kg} \times 3,645,000 \text{ m/s}^2 \approx 9.84 \times 10^9 \text{ N} \quad (\text{約 } 100 \text{ 万トン重})$$
柱にかかる面圧(圧縮応力)を計算!
桃白白の手のひらの面積をあえて大きく見積もって $0.02 \text{ m}^2$(両手分)としましょう。
この手と接触する面にかかる圧縮応力 $\sigma$ は、
$$\displaystyle \sigma = \frac{F}{S} = \frac{9.84 \times 10^9 \text{ N}}{0.02 \text{ m}^2} = 4.92 \times 10^{11} \text{ Pa} = 492 \text{ GPa}$$
一般的な花崗岩(岩石)の圧縮強度(破砕せずに耐えられる限界の圧力)は、高くても 0.1 〜 0.2 GPa(100〜200 MPa) 程度です。
さらに言えば、地球上で最も圧縮強度が高い物質の一つであるダイヤモンドでも約 130 〜 160 GPa です。
つまり、力学的には「桃白白が手を触れて押した瞬間に、手と接触した部分の石が粉塵レベルに粉砕し、柱全体が爆発するように砕け散る」のが現実です。 これに耐えている時点で、あの柱は圧縮強度がダイヤモンドの3〜4倍以上ある未知の超高強度材質ということになります!
4.衝撃②:桃白白が「飛び乗る」ときの曲げモーメント
さらに恐ろしいのは、飛んでいった柱に桃白白が上から飛び乗る瞬間です。
マッハ8で飛ぶ 2.7 トンの柱に対し、体重約 70 kg の桃白白が後ろから追いついてドスンと乗ります。
この時、柱の中央(または端)に桃白白の足が着地すると、柱には「曲げモーメント(折ろうとする力)」が働きます。
石材やコンクリートは「圧縮する力」には比較的強いのですが、「引っ張る力・曲げる力(引張強度)」には極めて弱いという性質を持っています(一般的な石の引張強度は、圧縮強度の $\displaystyle \frac{1}{10}$ 程度)。
桃白白が着地した瞬間の衝撃(仮に数万ニュートン)が一点に集中すると、柱の裏側に強力な引っ張り力が発生し、「竹を割るように真ん中からパキンと真っ二つに折れる」はずです。
しかし作中では、ピキピキとヒビが入ることすらなく、美しく水平を保ったまま飛んでいきます。
5.衝撃③:マッハ8の超音速風圧(動圧)と断熱圧縮熱
空中に放たれた柱は、マッハ8(時速約 10,000 km/h)で空気の中を突き進みます。
このとき、単純な動圧 $q$(空気密度 $\rho \approx 1.2 \text{ kg/m}^3$、速度 $v = 2,700 \text{ m/s}$)を計算すると、
$$\displaystyle q = \frac{1}{2} \rho v^2 = \frac{1}{2} \times 1.2 \times (2,700)^2 = 4,374,000 \text{ Pa} \approx 4.37 \text{ MPa}$$
柱の前面(断面積 $S \approx 0.5 \text{ m}^2$)にかかる荷重を求めるだけでも、最低で約 220 トンとなります。
★流体力学的な補足:
マッハ8は流体力学でいう「極超音速(ハイパーソニック)」の領域です。 柱の前面には強大な垂直衝撃波(ノーマルショック)が形成されるため、実際の柱前面にかかる流体圧力は上記計算の約2倍(約 440 トン以上)に達します!
さらに、超音速飛行によって柱の先端の空気は猛烈に圧縮されます。
淀み点(Stagnation point)の温度変化を熱力学の公式で計算すると、
$$\displaystyle T_{\text{淀み点}} = T_0 \left(1 + \frac{\gamma – 1}{2}M^2\right) = 288 \times (1 + 0.2 \times 64) \approx 3,970 \text{ K} \quad (\text{約 } 3,700 ^\circ\text{C})$$
なんと約 3,700 ℃(数千度)という太陽表面に迫る熱ショックが発生します。
普通の花崗岩や建築資材であれば、強烈な空気抵抗で押し潰され、数千度の熱で表面から削られて目的地に着く前に消滅してしまうレベルの過酷な環境なのです。
6.まとめ:桃白白が投げたのは「超高強度セラミック柱」だった!?
今回の材料力学・流体力学的な計算結果をまとめると、以下のようになります。
- 投擲時の圧縮応力: 492 GPa(ダイヤモンドの圧縮強度 130〜160 GPa の3〜4倍以上)
- 着地時の衝撃: 局所的な曲げ応力により、普通の石なら即座に破断する
- 飛行時の環境: 衝撃波を含め 400 トン以上の風圧 + 約 3,700 ℃ の断熱加熱

これらの計算から導き出される結論はひとつ。
「あの柱は、ただの石柱ではない。桃白白の気(オーラ)によって分子レベルで強固にコーティングされていたか、ドラゴンボール世界特有の超高強度セラミックス・超合金でできていた!」
速度や脚力ばかりが語られる桃白白の柱投げですが、「あの過酷な物理環境に耐えきった柱の堅牢さ(材料力学的な強度)」こそが、実は隠れた一番の恐怖(バケモノ要素)だったのかもしれません。
次にドラゴンボールを読むときは、ぜひあの「健気に耐え続ける柱」の強度にも注目してみてくださいね!


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