数列の単元で、多くの生徒が絶望する問題があります。
それが「等差数列と等比数列が掛け合わさった数列の和」です。
シグマの公式が使えず、途中の計算がとてつもなく長くなるため、テストで出題されると時間を大量に奪われてしまいます。
今回は、この問題に対する
王道の考え方
と、時間をショートカットできる
秘密の公式
を紹介します。
1. 王道の考え方:公比を掛けて、ずらして引く
まずは、教科書に載っている正式な解法の手順を確認しましょう。
この問題の最大の目的は、「等比数列の和の公式を使える形ムリヤリ作り出すこと」です。
そのために、以下の魔法のステップを踏みます。
- 求める和を S とおく。
- 両辺に等比数列の 公比 を掛ける。
- 項を一つ右にずらして、上下に並べて引き算をする。
なぜこんなことをするのでしょうか。
等差数列の部分は、隣り合う項の差が常に一定(公差)です。公比を掛けて一つずらして引くことで、この 等差数列の鬱陶しい部分がすべて同じ数字(公差)に生まれ変わり、きれいな等比数列が姿を現す からです。
2. 実践:王道の手順で解いてみよう
次の例題を、まずは王道の手順で解いてみます。
和を求める数列:$$1, 2, 3, … , n \text{(等差数列)}$$と、$$1, 2, 4, … , 2^{n-1} \text{(等比数列)}$$の積の和です。
求める和を S とします。
$$S = 1×1 + 2×2 + 3×4 + … + n×2^{n-1}$$
公比である 2 を両辺に掛け、一つずらして引きます。

引き算をした結果、$2$番目から$n$番目までの項が「初項2、公比2、項数$n$の等比数列の和」になりました。
最初の1と最後の $n×2^{n}$ だけがポツンとマイナスで残るのが、ミスを防ぐ最大のポイントです。
※ 最初の1から等比数列の和として考えることもできるが、
問題によって必ずしも最初から等比数列になるとは限らないので
この問題では第2項から考えている。
ちなみに、第2項から考えれば必ず等比数列になる。
等比数列の和を計算すると、
$$
\begin{eqnarray}
-S &=& 1+(2^{n}-2)- n×2^{n} \\
-S &=& 2^{n}-1- n×2^{n} \\
-S &=& (1-n)×2^{n}-1 \\
S &=& (n-1)2^{n}+1
\end{eqnarray}
$$
これが王道の解き方です。
理にかなっていますが、記述量が多く、マイナスの分配ミスなどが頻発します。
3. 教科書には載っていない裏ワザ公式 ~秘密の公式~
「考え方はわかったけれど、テスト本番でこの長い計算をミスなくやり切る自信がない」
そんなあなたのために、この「ずらして引く」という手順を文字式で完全に一般化し、公式としてまとめたものを紹介します。知る人ぞ知る、超強力な武器です。
等差数列の初項を $a$、公差を $d$ とします。
等比数列の公比を $r$ とします。
項数を $n$ としたとき、等差×等比の和 $S$ は、次の式で一発で求まります。
$$\displaystyle S = \frac{a – \{a + (n – 1)d\}r^n}{1 – r} + \frac{dr(1 – r^{n – 1})}{(1 – r)^2}$$
少し見た目がゴツいですが、構造はとてもシンプルです。
- 左の分数:もとの数列の「初項」と「末項に公比を1回余分に掛けたもの」の差を作ります。
- 右の分数:引き算をした結果生まれる「等比数列の和」の部分を処理しています。
4. 公式の威力を確認してみよう
先ほどの例題を、この公式に当てはめてみます。
等差数列の部分は、初項 $a=1$、公差 $d=1$ です。
等比数列の部分は、公比 $r=2$ です。
これらを公式に代入するだけです。
$$\displaystyle S = \frac{1 – \{1 + (n – 1)1\}2^n}{1 – 2} + \frac{1 \times 2(1 – 2^{n – 1})}{(1 – 2)^2}$$
分母が $-1$ と $1$ になるので、計算は一瞬で終わります。
$$\displaystyle S = \frac{1 – n \cdot 2^n}{-1} + \frac{2 – 2^n}{1}$$
$$\displaystyle S = n \cdot 2^n – 1 + 2 – 2^n$$
$$\displaystyle S = (n – 1)2^n + 1$$
いかがでしょうか。あの大掛かりな「ずらして引く」筆算を一切書かずに、わずか3行の代入計算で同じ答えにたどり着きました。
👤現役数学教師の視点:公式はどう使うべきか
この公式は非常に強力ですが、「これさえ丸暗記すればいい」というわけではありません。
記述式の試験では、ずらして引く過程 そのものを評価されることが多いからです。
しかし、共通テストのようなスピード勝負のマークシート試験や、自分の出した答えが合っているか確認する 検算 の手段として、これほど心強い味方はありません。
まずは王道の考え方で式を立てる練習をし、仕上げの確認としてこの公式を使う。この二刀流こそが、数列の計算地獄を無傷で突破する最強の戦術です。


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