【群数列】苦手な人必見!公式・解き方のコツと推定テクニックを解説

数学ⅡB

「群数列が苦手だ」「どこを見ればいいかわからない」という人はかなり多いです。特に模試や試験では、計算が複雑になりがちで得点率が低い分野でもあります。

群数列が難しい理由は、等差数列、等比数列、$\sum$(シグマ)計算といった数列の基本を完璧に使いこなす必要があるからです。つまり、総合力が試されるのです。

今回は、そんな群数列に苦手意識を持つ人に向けた、シンプルな考え方を解説します。


数列の基本(おさらい)

まずは武器となる基本公式を確認しましょう。ここが不安な場合は、必ず教科書に戻って復習してください。

等差数列

  • 一般項(第 $n$ 項)初項 $a$,公差 $d$ のとき$$a_n = a + (n-1)d$$
  • 総和($S_n$)項数 $n$ のとき$$S_n = \frac{1}{2}n \{2a + (n-1)d\}$$

等比数列

  • 一般項(第 $n$ 項)初項 $a$,公比 $r$ ($r \neq 1$) のとき$$a_n = ar^{n-1}$$
  • 総和($S_n$)$$S_n = \frac{a(1-r^n)}{1-r}$$

$\sum$(シグマ)の基本公式

自然数の和、二乗の和、三乗の和は頻出です。

  • $\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k = \frac{1}{2}n(n+1)$
  • $\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^2 = \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)$
  • $\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^3 = \left\{ \frac{1}{2}n(n+1) \right\}^2$

実践:例題解説

ここからは実際の試験に近い問題を解いていきます。

例題1

$n$ を自然数とする.次のような数列を考える.

$$1 \mid 1, 2 \mid 1, 2, 3 \mid 1, 2, 3, 4 \mid \cdots \mid 1, 2, \cdots, n \mid 1, \cdots$$

第 $n$ 群には $1$ から $n$ までの自然数が並んでいる.

(1) 第 $n$ 群の総和を求めよ.

(2) 第 $1$ 群から第 $n$ 群までの総和を求めよ.

(3) 総和が初めて $1500$ を超えるのは第何群の何番目か求めよ.

例題1 解説

(1) 第 $n$ 群の総和

第 $n$ 群は $1$ から $n$ までの自然数の和(初項1、公差1、項数$n$の等差数列の和)なので、

$$\frac{1}{2}n(n+1)$$

(2) 第 $1$ 群から第 $n$ 群までの総和

求める和は、(1)で求めた「各群の和」を第1群から第 $n$ 群まで足し合わせたものです。

よって、$\sum$ を用いて計算します。

$$\begin{aligned} \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{2}k(k+1) &= \frac{1}{2} \sum_{k=1}^{n} (k^2 + k) \\ &= \frac{1}{2} \left\{ \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1) + \frac{1}{2}n(n+1) \right\} \end{aligned}$$

ここで共通因数 $\frac{1}{6}n(n+1)$ でくくると計算が楽になります。

$$\begin{aligned} &= \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{6}n(n+1) \{ (2n+1) + 3 \} \\ &= \frac{1}{12}n(n+1)(2n+4) \\ &= \frac{1}{6}n(n+1)(n+2) \end{aligned}$$

(3) 総和が初めて $1500$ を超えるのは第何群の何番目か

まず「第何群で総和が1500を超えるか」を探します。(2)の式を用いて、

$$\frac{1}{6}n(n+1)(n+2) > 1500$$

を満たす最小の $n$ を求めます。式変形すると、

$$n(n+1)(n+2) > 9000$$

【ここがポイント!】

3次不等式を真面目に解く必要はありません。連続する3つの整数の積 $n(n+1)(n+2)$ は $n^3$ に近い値になります。

当たりをつけるために代入してみましょう。

  • $20^3 = 8000$
  • $30^3 = 27000$このことから、$n$ は20より少し大きい値だと予想できます。
  • $n=20$ のとき: $20 \cdot 21 \cdot 22 = 9240 > 9000$ (成立!)
  • $n=19$ のとき: $19 \cdot 20 \cdot 21 = 7980 < 9000$

よって、第20群の途中で1500を超えることがわかります。

次に、第19群までの総和を求めます。

$$\frac{1}{6} \cdot 19 \cdot 20 \cdot 21 = 1330$$

1500を超えるためには、あと $1500 – 1330 = 170$ 必要です。

第20群の中身は $1, 2, 3, \cdots$ という自然数の列なので、

$1$ から $m$ までの和が $170$ を超える最小の $m$ を探します。

$$\frac{1}{2}m(m+1) > 170 \iff m(m+1) > 340$$

ここでも当たりをつけます。

$10 \times 10 = 100$、$20 \times 20 = 400$ なので、18あたりを調べます。

  • $m=17$ のとき: $17 \cdot 18 = 306$
  • $m=18$ のとき: $18 \cdot 19 = 342 > 340$

よって $m=18$ です。

答え: 第20群の18番目

例題2

次のような数列を考える.

$$\frac{1}{1} \mid \frac{1}{2}, \frac{2}{2} \mid \frac{1}{3}, \frac{2}{3}, \frac{3}{3} \mid \frac{1}{4}, \frac{2}{4}, \frac{3}{4}, \frac{4}{4} \mid \frac{1}{5}, \cdots$$

第 $n$ 群には $n$ 個の項があり、分母はすべて $n$ である.

(1) 第 $100$ 項の値を求めよ.

(2) $\frac{15}{16}$ は第何項か求めよ.

(3) 第 $n$ 群の和 $S_n$ を求めよ.

(4) 第 $1$ 群から第 $n$ 群までの総和を求めよ.


例題2 解説

(1) 第 $100$ 項の値

まず、第 $100$ 項が第何群に含まれるかを特定するため、「鉄則2:末項までの総項数」を考えます。

第 $n$ 群の項数は $n$ 個なので、第 $n-1$ 群までの総項数は、

$$\sum_{k=1}^{n-1} k = \frac{1}{2}(n-1)n$$

となります。

第 $100$ 項が第 $n$ 群に含まれる条件は、以下の不等式を満たす最小の $n$ を求めることです。

$$\frac{1}{2}(n-1)n < 100 \le \frac{1}{2}n(n+1)$$

両辺を $2$ 倍すると、

$$(n-1)n < 200 \le n(n+1)$$

連続する自然数の積が $200$ に近い数を探します。

  • $13 \times 14 = 182$
  • $14 \times 15 = 210$

よって、 $n=14$ のとき、 $182 < 200 \le 210$ を満たします。

したがって、第 $100$ 項は第 $14$ 群に含まれます。

次に、第 $14$ 群の最初の項が何項目かを探します。

第 $13$ 群の末項は $\frac{1}{2} \cdot 13 \cdot 14 = 91$ 項なので、

第 $14$ 群の最初の項は第 $92$ 項です。

求める第 $100$ 項は、第 $14$ 群の中の $100 – 92 + 1 = 9$ 番目です。

鉄則3:中身の規則性」より、第 $14$ 群は分母が $14$ で固定され、分子が $1, 2, 3, \dots$ と進むので、第 $9$ 番目の項は $\frac{9}{14}$ です。

答え: $\displaystyle \frac{9}{14}$

(2) $\frac{15}{16}$ は第何項か

鉄則3:中身の規則性」より、分母が $16$ なので、この項は第 $16$ 群に含まれます。分子が $15$ なので、第 $16$ 群の $15$ 番目の項です。

この項の通算での番号を求めるには、「鉄則2:末項までの総項数」が必要です。

第 $15$ 群の末項までの総項数は、

$$\sum_{k=1}^{15} k = \frac{1}{2} \cdot 15 \cdot 16 = 120$$

よって、第 $16$ 群の $15$ 番目の項は、

$$120 + 15 = 135$$

答え:第 $135$ 項

(3) 第 $n$ 群の和 $S_n$

「鉄則3:中身の規則性」より、第 $n$ 群の項は $\frac{1}{n}, \frac{2}{n}, \dots, \frac{n}{n}$ の**$n$ 個**の項です。

$$\begin{aligned} S_n &= \frac{1}{n} + \frac{2}{n} + \cdots + \frac{n}{n} \\ &= \frac{1}{n}(1+2+\cdots+n) \\ &= \frac{1}{n} \cdot \frac{1}{2}n(n+1) \\ &= \frac{n+1}{2} \end{aligned}$$

答え: $\displaystyle S_n = \frac{n+1}{2}$

(4) 第 $1$ 群から第 $n$ 群までの総和

(3) で求めた各群の和 $S_k$ を、第 $1$ 群から第 $n$ 群まで足し合わせます。

$$\sum_{k=1}^{n} S_k = \sum_{k=1}^{n} \frac{k+1}{2} = \frac{1}{2} \sum_{k=1}^{n} (k+1)$$

ここで $\sum$ の計算を $k+1$ で行うと、

$$\sum_{k=1}^{n} (k+1) = \sum_{k=1}^{n} k + \sum_{k=1}^{n} 1 = \frac{1}{2}n(n+1) + n$$

したがって、総和は

$$\begin{aligned} \text{総和} &= \frac{1}{2} \left\{ \frac{1}{2}n(n+1) + n \right\} \\ &= \frac{1}{4}n(n+1) + \frac{2}{4}n \\ &= \frac{n}{4} (n+1+2) \\ &= \frac{n(n+3)}{4} \end{aligned}$$

答え: $\displaystyle \frac{n(n+3)}{4}$


例題3

次のような自然数の列を考える.

$$1 \mid 2, 3 \mid 4, 5, 6, 7 \mid 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15 \mid 16, \cdots$$

第 $n$ 群には $2^{n-1}$ 個の項が含まれている.

(1) 第 $n$ 群の最初の項を求めよ.

(2) 第 $n$ 群の和を求めよ.

(3) 総和が初めて $5000$ を超えるのは第何群の何番目か求めよ.


例題3 解説

(1) 第 $n$ 群の最初の項

鉄則1:項数」より、第 $k$ 群には $2^{k-1}$ 個の項が含まれています。

第 $n$ 群の最初の項を求めるには、まず「鉄則2:末項までの総項数」として、第 $n-1$ 群までの総項数を求めます。

$$\sum_{k=1}^{n-1} (\text{第} k \text{群の項数}) = \sum_{k=1}^{n-1} 2^{k-1}$$

これは初項 $2^0=1$、公比 $2$、項数 $n-1$ の等比数列の和なので、

$$\sum_{k=1}^{n-1} 2^{k-1} = \frac{1 \cdot (2^{n-1}-1)}{2-1} = 2^{n-1}-1$$

第 $n-1$ 群の最後の項が通算で $(2^{n-1}-1)$ 番目なので、

第 $n$ 群の最初の項は、その次の自然数($\text{値} = \text{番号}$)であるから、

$$(2^{n-1}-1) + 1 = 2^{n-1}$$

答え: $2^{n-1}$

(2) 第 $n$ 群の和

鉄則3:中身の規則性」より、第 $n$ 群は以下の等差数列です。

  • 初項 $a$:((1)より) $2^{n-1}$
  • 公差 $d$: $1$ (連続する自然数なので)
  • 項数 $\ell$: $2^{n-1}$

よって、第 $n$ 群の和 $S_n$ は、等差数列の和の公式 $S_{\ell} = \frac{\ell}{2}\{2a + (\ell-1)d\}$ より、

$$\begin{aligned} S_n &= \frac{2^{n-1}}{2} \left\{ 2 \cdot 2^{n-1} + (2^{n-1} – 1) \cdot 1 \right\} \\ &= 2^{n-2} \left\{ 2 \cdot 2^{n-1} + 2^{n-1} – 1 \right\} \\ &= 2^{n-2} \left\{ 3 \cdot 2^{n-1} – 1 \right\} \end{aligned}$$

答え: $2^{n-2} (3 \cdot 2^{n-1} – 1)$

(3) 総和が初めて $5000$ を超えるのは第何群の何番目か

この数列は単に自然数 $1, 2, 3, \dots$ を区切ったものなので、総和が $5000$ を超えるのは、自然数の総和 $\sum_{k=1}^{M} k$ が $5000$ を超えるときです。

$$\sum_{k=1}^{M} k = \frac{1}{2}M(M+1) > 5000$$

$$M(M+1) > 10000$$

$M^2 \approx 10000$ より、 $M \approx 100$ と予想できます。

  • $M=99$ のとき: $\frac{1}{2} \cdot 99 \cdot 100 = 4950$ ($5000$以下)
  • $M=100$ のとき: $\frac{1}{2} \cdot 100 \cdot 101 = 5050$ ($5000$超)

よって、$1$ から $100$ までの和で初めて $5000$ を超えます。つまり、第 $100$ 項(値は $100$)がどこにあるかを探せばよいことになります。

1. 第何群か特定する

(1) の結果から、「第 $n$ 群の最初の項は $2^{n-1}$」でした。 $100$ が含まれる群 $n$ は、以下の不等式を満たします。

$$2^{n-1} \le 100 < 2^n$$

$2$ の累乗を計算すると、

$$2^6 = 64, \quad 2^7 = 128$$

よって、 $64 \le 100 < 128$ なので、$n-1=6$ すなわち $n=7$ です。

$100$ は第 $7$ 群に含まれます。

2. 何番目か特定する

第 $7$ 群の最初の項は $2^{7-1} = 64$ です。

$100$ は第 $7$ 群の $(100 – 64) + 1$ 番目の項です。

$$100 – 64 + 1 = 37$$

答え:総和が初めて $5000$ を超えるのは、第 $7$ 群の $37$ 番目である。

まとめ:群数列は「地図」があれば怖くない

群数列が難しく感じる最大の理由は、「今、自分が数列のどこにいるのか?」という迷子になりやすいからです。

しかし、今回解説した**「3つの鉄則」**という地図を持っていれば、もう迷うことはありません。

  1. 項数:その群に何個入っているか?
  2. 通し番号:その群の最後は、全体で何番目か?
  3. 中身:その群の中では、どんなルールで数字が並んでいるか?

この手順通りに情報を整理すれば、必ず答えにたどり着けます。

試験で差がつく「代入テクニック」

また、解説中で何度も使った**「具体的な値を代入して当たりをつける」**というテクニックは、実際の試験(特に共通テストのようなマーク式)で非常に強力な武器になります。

例えば、「$n(n+1) > 9000$ を満たす $n$ は?」と聞かれたとき、真面目に2次不等式を解く必要はありません。「$100 \times 100 = 10000$ だから、90くらいかな?」と予想して計算する方が、圧倒的に早く、計算ミスも減らせます。

群数列は、計算力だけでなく「推測力」と「整理力」が試される分野です。

今回学んだ考え方を使って、ぜひ自信を持って問題に取り組んでください。きっと得点源にできるはずです!

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