数学IIの後半で習う微分・積分。
考え方はわかっているのに、なぜかグラフが書けない、
面積の計算までたどり着けないと悩む生徒は非常に多いです。
その原因のほとんどは、実は微分・積分の知識不足ではなく、
単元のはじめに習った
剰余の定理・因数定理 が使いこなせていない
ことにあります。
3次関数のグラフを描く際、$ x $ 軸との交点を求めるためには
3次方程式を解かなければなりません。
今回は、そのための最強の道具である 剰余の定理 と 因数定理 を、
現役教師の視点で徹底解説します。
1. 剰余の定理:代入するだけで 余り が出る魔法
整式の割り算をしたとき、いちいち筆算を書くのは大変ですよね。
剰余の定理は、その手間を劇的に減らしてくれます。
【剰余の定理】
整式 $ P(x) $ を $ x\,-\,a $ で割ったときの余りは $ P(a) $ である。
なぜ代入するだけで余りが出るのでしょうか?その理由は、割り算の基本式にあります。
整式 $P(x)$ を $ x \, -\, a $ で割ったときの商を $ Q(x) $、余りを $ R $ とすると、次の式が成り立ちます。
$$ \displaystyle P(x) = (x\, -\, a)Q(x) + R $$
この式(恒等式)の $x$ に $a$ を代入してみましょう。
$$\displaystyle P(a) = (a\, -\, a)Q(a) + R$$
$$\displaystyle P(a) = 0 \times Q(a) + R$$
$$\displaystyle P(a) = R$$
このように、$(x\, -\, a)$ の部分が都合よく 0 になって消えてしまうため、
長い割り算をしなくても、代入するだけで余り $R$ が一瞬で求められるのです。
2. 因数定理:3次方程式を解くための鍵
剰余の定理で、特に 余りが 0 になる場合 を考えたものが因数定理です。
これが3次方程式の因数分解の主役となります。
【因数定理】
$P(a) = 0$ ならば、$P(x)$ は $(x\, -\, a)$ を因数にもつ。(割り切れる)
ここが非常に重要なポイントです。先ほどの割り算の基本式をもう一度見てみましょう。
$$\displaystyle P(x) = (x\, -\, a)Q(x) + R$$
もし、余り $R$ が $0$ だったとしたらどうでしょうか。
$$\displaystyle P(x) = (x\, -\, a)Q(x)$$
となります。この式をよく見ると、あたかも $P(x)$ が $(x\, -\, a)$ と $Q(x)$ の掛け算で表された、
つまり 因数分解された形 に見えませんか?
だからこそ、私たちは「余りが 0 になる瞬間」を必死に探すのです。
余りが $0$ になる数字 $a$ さえ見つけることができれば、
それはそのまま「因数分解のパーツ(因数)」を見つけたことと同じ意味になるからです。
3. 実践!3次式の因数分解
実際に、因数定理を使って3次式を因数分解してみましょう。
【例題】
$$\displaystyle P(x) = x^3\, -\, 4x^2 + x + 6$$
を因数分解せよ。
【解説】
ステップ1:代入して 0 になる数を探す
やみくもに数字を入れるのではなく、
定数項の約数 (この場合は6の約数なので $\pm 1, \pm 2, \pm 3, \pm 6$)の中から探すのが鉄則です。
まずは $x = -1$ を代入してみましょう。
$$\displaystyle P(-1) = (-1)^3 – 4(-1)^2 + (-1) + 6$$
$$\displaystyle P(-1) = -1 \,- 4 \,- 1 + 6 = 0$$
見つかりました!
$P(-1) = 0$ なので、$P(x)$ は $(x + 1)$ で割り切れる(因数にもつ)ことがわかります。
ステップ2:割り算を実行する(組み立て除法)
$P(x)$ を $(x + 1)$ で割ります。筆算でも構いませんが、 組み立て除法 を使うと圧倒的に速く計算できます。
組み立て除法、または筆算により、商は $x^2 \,- 5x + 6$ となります。つまり、今のところ式はこうなっています。
$$\displaystyle x^3\, -\, 4x^2 + x + 6 = (x + 1)(x^2 \,- 5x + 6)$$
ステップ3:残りの2次式を因数分解する
最後に出てきた2次式 $x^2\, – 5x + 6$ は、中学で習った公式で簡単に因数分解できますね。
$$ x^2\, -\, 5x + 6 = (x\, -\, 2)(x \, -\, 3)$$
したがって、最終的な答えは以下のようになります。
$$(x + 1)(x\, -\, 2)(x\, -\, 3)$$
👤 【現役数学教師の視点:なぜここで 地獄 を見るのか?】
授業中、私は生徒によく
因数定理を甘く見ると、数IIの最後で地獄を見るぞ
と伝えています。
たとえば、微分を使って次の3次関数のグラフを描き、
$x$ 軸と囲まれた面積(積分)を求めるとしましょう。
$$\displaystyle y = x^3\, -\, 4x^2 + x + 6$$
面積を求めるためには、まず グラフがx軸とどこで交わるか(積分区間) を知る必要があります。つまり、$y = 0$ として、
$$\displaystyle x^3\, -\, 4x^2 + x + 6 = 0$$
という3次方程式を解かなければなりません。
お気づきでしょうか?
これはまさに、先ほど例題で解いた因数分解そのものです。
$$\displaystyle (x + 1)(x\, -\, 2)(x\, -\, 3) = 0$$
$$\displaystyle x = -1, 2, 3$$
もし 因数定理 や 組み立て除法 の計算スピードが遅かったり、
定数項から代入する数字を見つける感覚が鈍っていたりすると、
微積分の本題に入る前の ただの方程式を解く作業 で時間切れになってしまうのです。
微積分ができない と悩んでいる生徒の答案を見ると、
実は8割以上がこの 因数定理の計算ミス や 解の公式の手前での手が止まっている 状態です。
まとめ:先の単元を見据えた基礎固めを!
・ 剰余の定理: 代入するだけで余りがわかる便利なツール。
・ 因数定理: 代入して0になる数を見つければ、3次式が因数分解できる。
・ 定数項の約数に注目: 代入する数字は、一番最後の数字の約数から探す。
数学はすべてが繋がっています。
今の単元が ただの計算練習 に思えても、それが半年後の強力な武器になります。
どうしても代入する数字が見つからない時は、深呼吸して $\pm 1, \pm 2, \pm 3$ あたりを丁寧に計算し直してみてくださいね。

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