数学Ⅰで100の正の約数の個数は?や,その約数の総和はいくつか?などの問題を解いたことはないだろうか.
その際に次のような公式を使ったであろう.
公式(約数の種類が2つの場合)
$N$を素因数分解したときに,
$$N=m^{a}n^{b}$$
となったときに,
正の約数の個数は$(a+1)(b+1)$である.
正の約数の和は$(1+a+a^{2}+ \cdot \cdot \cdot + a^{m})(1+b+b^{2}+ \cdot \cdot \cdot + a^{n})$
約数の個数は指数部分になぜ+1するのか.約数の和はなぜ$( )$でくくられたきれいな形なのか.
解説していきます.
以後,「正の約数」とはせず「約数」と書くが,それは「正の」省略していると考えてほしい.
公式の解説
その約数はどのようにして,作られるのかを考えてみる.
例として12の約数について考えてみる.
12の約数は1,2,3,4,6,12である.
したがって,約数の個数は6個,和は28である.
誰でも計算できてしまうので,公式のありがたみはないが,一応ここでは公式を解説するために我慢してみていてほしい.
$12=2^{2} \cdot 3^{1}$と書けるので,次のような表を作ってみよう.
$2^{0}=1$ | $2^{1}=2$ | $2^{2}=4$ | |
$3^{0}=1$ | $1 × 1 = 1$ | $2 × 1 = 2$ | $4 × 1 = 4$ |
$3^{1}=3$ | $1 × 3 = 3$ | $2 × 3 = 6$ | $4 × 3 = 12$ |
表の一番上の行の青い部分は素因数分解した際の$2^{2}$から$2^{2}$までの部分を表している.
表の一番左の列の緑の部分は素因数分解した際の$3^{0}$から$3^{1}$までの部分を表している.
そして重要なのが赤い部分であるが,これは青と緑の積であり,その値はすべて12の約数を過不足なく表しているのだ.
約数の個数について
赤い部分のマス目の個数が約数の個数になる.
青は0乗から2乗まで書いてあるので$2$+1で3列ある.緑は0乗から1乗まで書いてあるので$1$+1で2行ある.
よってそれらの積がマス目の個数になるから$3×2=6$個となる.
ここに+1というのが現れるのだ.
約数の和について
個数は直感的に理解しやすいが,和は直感ではなく因数分解といった計算が含まれてくる.
上の表から約数の和を次のように表す.
\begin{eqnarray}
1+2+4+3+6+12 &=& 1×1+2×1+4×1+1×3+2×3+4×3 \\
&& 前3つと後ろ3つの項をそれぞれ1と3でくくる \\
&=& (1+2+4)×1+(1+2+4)×3 \\
&& (1+2+4)でくくる \\
&=& (1+2+4)(1+3) \\
&=& (2^{0}+2^{1}+2^{2})(3^{0}+3^{1})
\end{eqnarray}
よって,最初の括弧には$2^{0}$から2^{2}までの和,次の括弧には$3^{0}$から$3^{1}$までの和がある.
このようにして,公式が成り立っているのだ.
ポイントは約数を積の形にして数を文字のように扱い因数分解をする.
次に一般化された公式を紹介する.
公式(約数の種類が$n$個のとき)
$N$を素因数分解したときに,
$$N=m_{1}^{a_{1}} \cdot m_{2}^{a_{2}} \cdot m_{3}^{a_{3}} \cdot \cdot \cdot m_{n}^{a_{n}}$$
となったときに,
正の約数の個数は$(a_{1}+1)(a_{2}+1)(a_{3}+1) \cdot \cdot \cdot (a_{n}+1)$である.
正の約数の和は$(1+a_{1}+a_{1}^{2}+ \cdot \cdot \cdot + a_{1}^{m_{1}})
(1+a_{2}+a_{2}^{2}+ \cdot \cdot \cdot + a_{2}^{m_{2}}) \cdot \cdot \cdot
(1+a_{n}+a_{n}^{2}+ \cdot \cdot \cdot + a_{n}^{m_{n}})$
上記と同様にして考えることが可能であるが,2から$n$になると次元が2次元から$n$次元の表を考えなければならないので視覚的に理解するのは難しい.
しかし,3次元であれば立体なのでなんとか視覚的に考えることができそうだが,それでも大変であろう.
読者はぜひ,約数の種類が2つの形でしっかり理解してほしい.
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