1. 条件付き確率で悩んでいませんか?
確率の単元の中でも、「条件付き確率」特に「原因の確率」と呼ばれる問題でペンが止まってしまう人は多いのではないでしょうか。
公式$\displaystyle P_A(B) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)}$を覚えようとしても、どれが分母でどれが分子か分からなくなったり、計算の意味が見えなくなったりしがちです。
今回は、そんな悩みを持つ方のために、あえて公式を使わず、具体的に考えることで瞬時に解く方法(多少強引ですが、最も確実な方法)を解説します。
2. 例題:不良品の原因はどっちの工場?
まずは、よくある典型的な問題をみてみましょう。
【例題】
A工場で製品300個、B工場で400個を作り、これらを混ぜて出荷しました。
A工場の製品には不良品が2%、B工場の製品には不良品が1%含まれていることがわかっています。
出荷した700個から取り出した1個の製品が不良品であったとき、それがA工場で作られた製品である確率を求めなさい。
2-1. 解説:なぜ条件付き確率は難しいのか
普通の確率は解けるのに、条件付き確率になると急に難しく感じる。
その原因の多くは、「全体の通り数(分母)」の取り違えにあります。
確率の基本定義は以下の通りです。
$$P(A)=\frac{Aが起こる場合の数}{全体の場合の数}$$
この定義自体は皆さんよく理解しているはずです。
例えば、サイコロを1個投げるなら全体は6通り、コインを3枚投げるなら全体は8通りです。
「全体の数」は問題設定から自然と決まることが多く、迷うことは少ないでしょう。
しかし、条件付き確率では、この「全体の数(分母)」が変化します。
ここが最大の落とし穴です。問題文によって、全体が「29通り」になったり「23通り」になったりと、コロコロ変わるのです。
攻略の鍵は「〇〇のとき」に注目する
では、条件付き確率において「全体の数(分母)」はどこに書いてあるのでしょうか?
それは問題文の「〇〇のとき」という部分です。
今回の例題を見てみましょう。
「不良品であったとき、それがA工場で作られた…」とありますね。
つまり、この問題における「世界(全体)」は、700個の製品すべてではなく、
「不良品」だけに限定された世界なのです。
- × 間違い:分母を700個(全製品)にする
- 〇 正解:分母を「不良品の合計個数」にする
2-2. 解答:具体的な「個数」で考えよう
確率(%)のまま計算するとややこしいので、具体的な「個数」を出して表にしてみましょう。
これが最もミスが少ない方法です。
ちなみに、この具体的な個数は問題で与えられていないときは適当で構いません。
手順1:それぞれの不良品の個数を計算する
- A工場の不良品: $300 \times 0.02 = 6$ 個
- B工場の不良品: $400 \times 0.01 = 4$ 個
手順2:状況を整理する
| 製品総数 | 良品 | 不良品 | |
| A工場 | 300個 | 294個 | 6個 |
| B工場 | 400個 | 396個 | 4個 |
| 合計 | 700個 | 690個 | 10個 |

手順3:分母と分子を決定する
- 分母(全体の数):条件は「不良品のとき」でした。上の表の「不良品」の列を見てください。A工場の6個とB工場の4個、あわせて10個。これが今回の分母です。
- 分子(求める数):その不良品の中で「A工場の製品」は何個あるでしょうか? 表を見れば一目瞭然、6個ですね。(ここでA工場の総数300個を使ってはいけません。「不良品の世界」の話をしているからです)
計算
したがって、求める確率は以下のようになります。
$$\frac{6}{6+4} = \frac{6}{10} = \frac{3}{5}$$
3. まとめ
いかがでしたか?
難しく見える条件付き確率も、以下の2ステップを踏めば驚くほど単純になります。
- 「〇〇のとき」を見つけて、それを新しい「全体(分母)」と決める。
- 具体的な個数を計算して、その中での割合を見る。
この「全体の個数を絞り込んで考える」という視点を持てば、公式を丸暗記する必要はありません。
次回は、もう少し難易度の高い「原因の確率」の問題を出題します。この考え方が応用できるか、ぜひ挑戦してみてください。


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