【あなたも確率に騙されている?】感覚とズレる「独立試行」の罠

数学ⅠA

この世の中には、私たちの感覚とズレる確率が存在します。

数学をきちんと理解している人からすれば当たり前のことでも、
直感に頼ると痛い目を見てしまう……今回はそんな「確率の落とし穴」を紹介します。

1. 5回連続で「表」が出た。次はどっち?

まずは、よくある勘違いの例を見てみましょう。
あなたは今、コイン投げのギャンブルをしています。

【例題】運命の6回目

歪みのないコインを5回投げました。その結果、なんと5回連続で「表」が出ました。

さて、運命の6回目。

あなたは「表」と「裏」、どちらに賭けますか?

※ちなみに、6回連続ですべて表になる確率は $\displaystyle\frac{1}{64}$(約1.5%)です。

2. 「そろそろ裏が出る」という心理の正体

多くの人はこう考えます。

「5回も表が続いたんだから、そろそろバランスをとって『裏』が出るはずだ」

「6回連続で表が出る確率は $\displaystyle\frac{1}{64}$ しかないんだから、次は裏が出る確率の方が高いはずだ」

もしそう思ったなら、あなたはすでに「ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)」と呼ばれる確率の沼にはまっています。

結論から言うと、正解は「表も裏も確率は五分五分($\displaystyle\frac{1}{2}$)なので、どちらに賭けても同じ」です。

3. なぜ $\displaystyle\frac{1}{64}$ と混同してしまうのか?

ここでの勘違いの原因は、「連続する試行(全体の確率)」と「1回だけの試行(目の前の確率)」をごちゃ混ぜにしている点にあります。

  • 視点A(全体を見る): 「これから6回投げて、全部表になる確率」は確かに $\displaystyle\frac{1}{64}$ です。
  • 視点B(今を見る): しかし、今は「すでに5回表が出た」という終わった過去の話です。

コインには記憶力がありません。
「さっきまで表ばかりだったから、次は裏を出してやろう」と気を使ってくれることはないのです。

4. 「独立試行」を理解すれば騙されない

この「過去の結果に影響されない」という性質を、数学用語で「独立(独立試行)」と呼びます。ここを整理すると、世界がクリアに見えてきます。

勘違いしやすい人は、コイン投げ(独立)を、くじ引き(従属)のように「表が出すぎたから、表の在庫が減って次は裏が出やすい」と無意識に感じてしまっているのです。以下の表で違いを確認してみましょう。

種類特徴具体例
独立試行
(影響しない)
何度やっても確率はリセットされる。前の結果は無視していい。・サイコロを振る
・コイン投げ
・くじを引いて箱に戻す
従属試行
(影響する)
前の結果で確率が変わる。前の結果が重要。・くじを引いて箱に戻さない
(当たりが減ると次はハズレやすい)

【数学教師の視点:カジノの電光掲示板】

【数学教師の視点:カジノの電光掲示板】

私が、確率の授業で生徒によく話していた「カジノの罠」の話があります。

カジノのルーレット会場には、親切にも「過去の出目(赤・黒)」が表示される電光掲示板が設置されていることがあります。

もしそこで「赤・赤・赤・赤……」と連続して赤が続いていたら、どう思うでしょうか? お客さんの多くは「そろそろ黒が来るはずだ!」と熱くなって「黒」にチップを積み上げます。

しかし、店側(胴元)はその心理をよく知っていて、あえて掲示板を見せているのです。
(店側はお客さんを賭けに参加させるだけで利益が出る)

ルーレットもまたコイン投げと同じ「独立試行」です。何回「赤」が続こうが、次の瞬間に「赤」が出る確率は変わりません。

「過去の結果は、次の確率に一切関係ない」。この冷徹な事実を知っている店側だけが、感情的になる客を横目に、冷静に利益を上げ続けるのです。数学を知らないということは、時に搾取される側になるということでもあります。

まとめ:確率とはドライに付き合おう

いかがでしたか?

「運の流れ」や「バランス」といった人間的な感情を、確率は一切考慮してくれません。

  • 全体で見れば確率は低い(6連続表は珍しい)。
  • しかし、目の前の1回は常に公平(次はどっちも50%)。

この2つを切り分けて考えることができれば、ギャンブルだけでなく、日常の選択でも冷静な判断ができるようになります。直感に頼らず、確率とは「ドライなお付き合い」をしていきましょう。

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