ゆがんだコイン問題:そのギャンブルは公平か?
一般的にギャンブルというものは、テラ銭(手数料)や確率の設定により、
ほとんどの場合(というかすべて)胴元が勝つように設計されています。
そのため、賭ける側は負けることが多く、数学的な意味で「公平」であることは稀です。
そこで今回は、直感とは少し異なる結果になる「ゆがんだコイン」を使った問題を考えてみましょう。
高校数学の「確率」と「期待値」の良いトレーニングにもなります。
問題設定:ゆがんだコインのギャンブル
ゆがんだコインとは、表と裏の出る確率がそれぞれ $\displaystyle \frac{1}{2}$ ずつではない、重心が偏ったコインのことです。さて、こんなコインを使って次のような勝負をします。
【ルール】
- コイン: 表と裏の出る確率は $\displaystyle \frac{1}{2}$ ずつではない(偏りがある)。
- 賭け方: 賭ける側(あなた)は「表」か「裏」かの出る方を予想して賭ける。
- 賭け金: 100円。
- 配当: 予想が当たれば200円を受け取り、外れれば没収(0円)。
- 前提: 賭ける側は、このコインの表と裏のそれぞれの出る確率(どちらに偏っているか)を知らない。
さて、このギャンブルは公平でしょうか?
それとも、コインが歪んでいる以上、胴元か賭ける側のどちらかが有利になるのでしょうか?
期待値を計算する前に、まずは比較対象として「普通のコイン」の場合を考えてみます。
ゆがみのない(普通の)コインだった場合
もし、コインにゆがみがなく、表と裏の出る確率がそれぞれ $\displaystyle \frac{1}{2}$ ずつだった場合、期待値を計算するのは容易です。
■ 表に賭けた場合の期待値
$$\frac{1}{2} \times 200\text{円} + \frac{1}{2} \times 0\text{円} = 100\text{円}$$
■ 裏に賭けた場合の期待値
$$\frac{1}{2} \times 0\text{円} + \frac{1}{2} \times 200\text{円} = 100\text{円}$$
表に賭けても裏に賭けても、戻ってくる見込みの金額(期待値)は100円です。
参加費(賭け金)が100円で、期待値も100円。つまり、プラスマイナスゼロなので「公平なギャンブル」といえます。
ここでのポイントは、予想を言い当てることができる確率が $\displaystyle \frac{1}{2}$ ならば公平になるということです。
では、本題のゆがんだコインの場合はどうなるでしょうか。

ゆがんだコインの表裏を言い当てる確率
ゆがんだコインの場合、表が出る確率と裏が出る確率は等しくありません。
そこで、表が出る確率を $p$ 、裏が出る確率を $q$ と置きます。
(どちらか必ず出るので、$p + q = 1$ が成り立ちます)
賭ける側の心理と行動
ここがこの問題の核心です。
賭ける側は「コインが歪んでいること」は知っていますが、「表と裏のどちらが出やすいか」までは知りません。
情報がない以上、賭ける側が「表」を選ぶか「裏」を選ぶかは完全にランダムであり、その選択確率はそれぞれ $\displaystyle \frac{1}{2}$ と仮定するのが数学的に自然です。
的中確率の計算
予想を言い当てる(的中する)パターンは以下の2つです。これらは互いに素(同時には起こらない)事象です。
- 「表」と予想し(確率 $\displaystyle \frac{1}{2}$)、実際に「表」が出る(確率 $p$)
- 「裏」と予想し(確率 $\displaystyle \frac{1}{2}$)、実際に「裏」が出る(確率 $q$)
これらを式にすると、的中確率は次のようになります。
$$
\begin{aligned}
P(\text{的中}) &= \left( \frac{1}{2} \times p \right) + \left( \frac{1}{2} \times q \right) \\[10pt]
&= \frac{1}{2} (p + q) \\[10pt]
&= \frac{1}{2} \times 1 \quad (\because p+q=1) \\[10pt]
&= \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$
計算の結果、表裏を言い当てる確率は、コインがどう歪んでいようと $\displaystyle \frac{1}{2}$ になることが分かりました。
問題の答え:期待値と公平性判定
的中確率が $\displaystyle \frac{1}{2}$ であることが証明されたので、このギャンブルの期待値を計算します。
$$\frac{1}{2} \times 200\text{円} + \frac{1}{2} \times 0\text{円} = 100\text{円}$$
【結論】
期待値(100円)と賭け金(100円)が等しいため、このギャンブルは公平である。
まとめ
直感的には「道具(コイン)が歪んでいるのだから、勝負も不公平になるはずだ」と考えがちです。
しかし、今回のケースで重要なのは以下の2点でした。
- 偏りが未知であること: どちらに歪んでいるか分からないため、プレイヤーの予想はランダム($\displaystyle \frac{1}{2}$)になる。
- 確率の相殺: 計算過程の $\displaystyle \frac{1}{2}(p+q)$ で見たように、表の偏りと裏の偏りが足し合わされて「1」になり、結果として確率は $\displaystyle \frac{1}{2}$ に収束する。
注意点
もし、胴元がコインの歪みを知っていて、「今回は客に賭ける先を選ばせず、強制的に『表』に賭けさせる」というルールだった場合はどうでしょう?
その場合、もしコインが裏の出やすいもの($q > p$)であれば、客の勝率は $\displaystyle \frac{1}{2}$ を下回ってしまい、圧倒的に不利になります。
「選択権がどちらにあるか」と「情報の非対称性」こそが、ギャンブルの有利不利を決める最大の要因なのです。
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【応用確率】ゆがんだコインのギャンブルに勝つ!公平性を崩す「最強戦略」と「公平を作る裏ワザ」



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