三角関数の変換公式は丸暗記するな!現役数学教師が教える『1秒導出』の極意

数学ⅡB

数学Ⅰでの三角比、数学Ⅱでの三角関数において、次のような変換公式を見たことがある人は多いかと思います。

$$\sin(90^\circ-\theta) = \cos\theta$$

$$\cos(180^\circ-\theta) = -\cos\theta$$

$$\tan(90^\circ+\theta) = \displaystyle -\frac{1}{\tan\theta}$$

$$\sin(180^\circ+\theta) = -\sin\theta$$

$$\cos(270^\circ-\theta) = -\sin\theta$$

これらはほんの一部ですが、教科書には全部で20種類近くの公式が並んでいます。これらをみなさんはどのように覚えましたか?

数が多いので、気合いで丸暗記している人もいるかもしれません。今回は、これらの公式を「簡単な2つのこと」を意識するだけで、その場で一瞬にして変換できてしまう裏ワザを紹介したいと思います。

前提知識:三角比の正負の値

この変換公式をマスターするための前提知識として、「$\theta$の角度が第何象限にあるかによって、$\sin\theta$、$\cos\theta$、$\tan\theta$の符号(プラスかマイナスか)が決まる」ということをおさらいしておきます。

ここでは厳密な定義は一旦置いておき、次のようにシンプルに捉えてください。

  • $\sin$ は $y$座標
  • $\cos$ は $x$座標
  • $\tan$ は 傾き

例えば、$\theta$が「第2象限の角」だとします。原点から動径が$\theta$となるところに点をとると、その点の座標は「$x$座標は負、 $y$座標は正、 原点と結んだ直線の傾きは負」になりますよね。 したがって、$\theta$が第2象限のとき、$\sin\theta$ は正$\cos\theta$ は負$\tan\theta$ は負となります。

この感覚をしっかり持ったうえで、変換公式のルールを見ていきましょう。

変換公式の最強の覚え方

教科書に載っている変換公式の右辺をよく見ると、次のような共通点があることに気づきませんか?

  • 角度の部分が $\theta$ のみになっている
  • $\sin\theta$、$\cos\theta$、$\tan\theta$ がすべて単独である(和や積の形ではない)

この性質から、三角比の変換は次の2つの要素さえ判断できれば、自分で作れてしまうのです。

  1. 符号( $+$ か $-$ か )
  2. $\sin, \cos, \tan$ のどれを使うか

では、これらをどうやって判断するのかを解説します。

① 符号の判断

符号は、先ほどの「第何象限か」と絡めて考えます。

例えば、$\sin(90^\circ-\theta)$ の符号を考えるとき、「 $(90^\circ-\theta)$ が第何象限の角なのか」を意識します。

「$\theta$が何度か分からないのに、象限なんて分かるわけない!」と思うかもしれません。ここがポイントです。変換の公式を考えるときは、$\theta$を「ちょっとの角(10°くらいの鋭角)」だと思い込んでください。

そうすれば、$(90^\circ-\theta)$ は「80°くらい」なので、第1象限の角だと分かります。第1象限の $y$座標($\sin$)は正なので、符号は $+$ となります。

② $\sin, \cos, \tan$ のどれを使うかの判断

変換する前の角度の「$\theta$以外の部分」に着目します。

例えば $\sin(90^\circ-\theta)$ であれば「90°」の部分です。公式には他にも 180°、270°、360° などが出てきますが、これを2つのグループに分類して次のように覚えます。

  • 90°、270° のグループ $\rightarrow$ 「変える」
  • 180°、360° のグループ $\rightarrow$ 「そのまま」
  • 90°、270° のグループ $\rightarrow$ 「変える」
  • 180°、360° のグループ $\rightarrow$ 「そのまま」

ここでいう「変える」とは、次のようにペアを入れ替えるということです。

  • $\sin \leftrightarrow \cos$
  • $\tan \leftrightarrow$ $\displaystyle \frac{1}{\tan}$

よって、$\sin(90^\circ-\theta)$ は90°のグループなので「変える」。つまり $\cos$ になることが分かります。

要点まとめ

結局、次の2つのステップを踏むだけで、すべての公式が導けます。

  1. 角度全体が第何象限か?(符号の決定) ※$\theta$は鋭角と仮定
  2. $\theta$以外の数字は何度か?(関数の決定) ※90°, 270°なら変える、180°, 360°ならそのまま

さっそく、この法則を使って公式を導いてみましょう。


公式を導こう(例題)

(1) $\sin(90^\circ+\theta)$

  • 符号: $90^\circ+\theta$ は第2象限。第2象限の$\sin$($y$座標)は正だから $+$
  • 関数: 90°だから「変える」$\rightarrow \cos$へ
  • 結論:$$\sin(90^\circ+\theta) = \cos\theta$$

(2) $\cos(180^\circ-\theta)$

  • 符号: $180^\circ-\theta$ は第2象限。第2象限の$\cos$($x$座標)は負だから $-$
  • 関数: 180°だから「そのまま」$\rightarrow \cos$のまま
  • 結論:$$\cos(180^\circ-\theta) = -\cos\theta$$

(3) $\tan(180^\circ+\theta)$

  • 符号: $180^\circ+\theta$ は第3象限。第3象限の$\tan$(傾き)は正だから $+$
  • 関数: 180°だから「そのまま」$\rightarrow \tan$のまま
  • 結論:$$\tan(180^\circ+\theta) = \tan\theta$$

(4) $\sin(270^\circ+\theta)$

  • 符号: $270^\circ+\theta$ は第4象限。第4象限の$\sin$($y$座標)は負だから $-$
  • 関数: 270°だから「変える」$\rightarrow \cos$へ
  • 結論:$$\sin(270^\circ+\theta) = -\cos\theta$$

(5) $\cos(\theta-180^\circ)$

  • 負の角度(時計回りの方向)でも同様に考えます。$\theta$を10°くらいと仮定すると、$\theta-180^\circ$ ($10^\circ-180^\circ = -170^\circ$)は第3象限。第3象限の$\cos$($x$座標)は負だから $-$
  • 関数: 180°だから「そのまま」$\rightarrow \cos$のまま
  • 結論:$$\cos(\theta-180^\circ) = -\cos\theta$$

(6) $\tan(\theta-90^\circ)$

  • 同様に、$\theta-90^\circ$ ($10^\circ-90^\circ = -80^\circ$)は第4象限。第4象限の$\tan$(傾き)は負だから $-$
  • 関数: 90°だから「変える」$\rightarrow$ 分数へ
  • 結論:$$\tan(\theta-90^\circ) = \displaystyle -\frac{1}{\tan\theta}$$

実戦問題(問題集レベル)

法則は掴めましたか?最後は実戦問題です。解けた方はぜひ答えをコメント欄に書き込んでみてください!

問題

(1)

$$\sin^2(270^\circ+\theta) + \cos^2(90^\circ+\theta)$$

(2)

$$\displaystyle \frac{1}{\tan^2(90^\circ-\theta)} – \frac{1}{\cos^2(180^\circ-\theta)}$$

実践問題の解答・解説

(1) $\sin^2(270^\circ+\theta) + \cos^2(90^\circ+\theta)$ の解答

【ステップ1:それぞれの項を変換する】

  • $\sin(270^\circ+\theta)$ の変換
    • 符号: $270^\circ+\theta$ は第4象限。$\sin$($y$座標)は負なので $-$。
    • 関数: 270°なので「変える」 $\rightarrow \cos$。
    • よって、$\sin(270^\circ+\theta) = -\cos\theta$
  • $\cos(90^\circ+\theta)$ の変換
    • 符号: $90^\circ+\theta$ は第2象限。$\cos$($x$座標)は負なので $-$。
    • 関数: 90°なので「変える」 $\rightarrow \sin$。
    • よって、$\cos(90^\circ+\theta) = -\sin\theta$

【ステップ2:式に代入して計算する】

与式はそれぞれの「2乗」の和なので、

$$\displaystyle (-\cos\theta)^2 + (-\sin\theta)^2$$

$$= \cos^2\theta + \sin^2\theta$$

三角比の相互関係 $\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ より、

答え:$1$


(2) $\displaystyle \frac{1}{\tan^2(90^\circ-\theta)} – \frac{1}{\cos^2(180^\circ-\theta)}$ の解答

【ステップ1:それぞれの項を変換する】

  • $\tan(90^\circ-\theta)$ の変換
    • 符号: 第1象限なので $+$。
    • 関数: 90°なので「変える」 $\rightarrow$$$\displaystyle \frac{1}{\tan\theta}$$
  • $\cos(180^\circ-\theta)$ の変換
    • 符号: 第2象限なので $-$。
    • 関数: 180°なので「そのまま」 $\rightarrow \cos$。
    • よって、$\cos(180^\circ-\theta) = -\cos\theta$

【ステップ2:式に代入して整理する】

与式に代入すると、

$$\displaystyle \frac{1}{\left(\frac{1}{\tan\theta}\right)^2} – \frac{1}{(-\cos\theta)^2}$$

$$\displaystyle = \tan^2\theta – \frac{1}{\cos^2\theta}$$

ここで、三角比の相互関係 $\displaystyle 1 + \tan^2\theta = \frac{1}{\cos^2\theta}$ を変形した $\displaystyle \tan^2\theta – \frac{1}{\cos^2\theta} = -1$ を用いると、

答え:$-1$

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